先日、愛媛県の宇和島市にある『古民家』へ行ってきました。
宇和島市には、伊達家由来の「宇和島城」があります。
ですので宇和島市は、城下町として栄え、発展してきたという歴史があります。
そういったことから、宇和島市には立派な古民家が数多く現存しています。
そんな宇和島市で、築200年超える古民家に住み、古民家建築・リフォームの専門家として活躍されているのが、「與那原浩建築設計室」の與那原ご夫妻。
(お名前の「與那原」の読みかたは「ヨナハラ」です)
今回、與那原ご夫妻のご好意により、お住まいの古民家に宿泊させていただき、レクチャーいただく機会がありました。
ということで今回の記事は、與那原氏が住居兼事務所にしている築200年超の古民家のご紹介をさせていただきながら、古民家の魅力を書いてみたいと思います!
目次
『古民家』って何?
最近よく目にしたり耳にする『古民家』。
「古民家再生」とか「古民家カフェ」「古民家 リノベーション」といった言葉はよく聞きますね。
『古民家』って何でしょうか?
古い家のこと?
どのくらい古いと『古民家』っていうの?
そんな疑問があったので、すこし調べてみました。
「ウィキペディア」には、このように書かれています。
古民家(こみんか)は日本の住宅の類例。民家のうち、特に建造されてから時を経たものをいう。
古民家の定義に、どの時代に建てられたものか、あるいは建造され何年を経たものを指すかの定義はないが、通常は戦前以前のもの、特に大正以前のものをさす場合が多い。
また、その建築方式が釘などを使わない伝統的日本建築で建てられた建物を特定することが多い。
『古民家』に、明確な定義はないようですね。
「大正」時代は、1912年に始まっています。
ですので、築100年以上の民家については、堂々と『古民家』と言えるでしょうね。
ただ、「古民家鑑定士」と呼ばれる人達が鑑定するものは、「築50年以上の古民家」ということになっています。
まあ、かなり『古民家』の定義はあいまいだということだけははっきりしました^^
現在、現存している最古の古民家は、兵庫県神戸市北区山田町衝原(つくはら)にある「箱木家住宅(はこぎけじゅうたく)」。
「箱木千年家」とよばれ、国の重要文化財に指定されています。
室町時代に建てられました。
いかにも「古民家!」って外観ですね。
これでなんとなく「古民家」ってものがわかったところで、與那原氏が住む古民家をみていきたいと思います!
築200年の古民家に住む古民家建築の専門家!與那原浩氏
今回宇和島市訪問にあたり、本物の「古民家」に宿泊させていただき、生活を体験させていただく機会にめぐまれました。
そのような貴重な機会を私にあたえてくれたのは、実際に古民家に住み、古民家建築のプロとして活躍している「與那原浩建築設計室」の與那原浩氏。
與那原氏が住む古民家は、なんと築200年超!
江戸時代の文化文政時代(1804年~1830年)に建築され、宇和島市の名士「太宰家」が代々受け継いできた由緒ある古民家です。
築200年といっても、そのスゴさがいまいちピンときにくいのですが、あの世界遺産に登録された白川郷の集落の古民家たちと、ほぼ同じ時代といえばわかりやすいでしょうか。
「白川郷」って、こんな合掌造りの家です。
まさに「日本昔話」の世界って感じですよね。
ですので、この築200年の古民家に今も実際に住んでいるということは、かなりアンビリーバボーというか、奇跡に近いことなんです!
まあ、重要文化財の中に住んでいるといってもいいかもしれません。
しかも、かなり状態がいいのです。
與那原氏は、自身のホームページでこのように書かれています。
我が家は、江戸末期に建築された200年以上の古民家です。
長い年月、先祖代々受け継がれた木造住宅ですが、現在でもとてもしっかりしています。
なぜ、古民家は100年以上も長持ちするのか?
それは、風土にあった造りをしているからです。
ここ南予地方は温暖な気候で雨が多い地域です。そのため、強い日射や雨風から守ってくれる深い軒先、漆喰の壁、広い開口部などで、湿気をうまく逃がすような造りになっています。家が長く持つということは、それだけ家自体が健康ということです。家が健康であれば、住んでいる人も健康になります。
シンプルで簡素だけれども、心が豊かになるような居心地のいい古民家。
長い年月は経ってないけれど、断熱・気密を考慮した木組みの古民家風住宅で、あなただけのこだわりの家をデザインします!
200年以上も古民家がいい状態で長持ちしているのは、宇和島市のある南予地方の独特な気候という要素も大きいのですね。
そして、そこに住んでいる人の住み方もありますね。
文章からもわかるとおり、與那原氏は実に古民家愛にあふれていて、その中での生活を楽しんでいるのです^^
今回は、こんな感じで與那原浩氏に古民家の説明を受けました^^
ちょうど天井裏についての説明をしていただいているところですね。
いやー、当りまえですが無茶苦茶詳しいですし、なにより古民家への愛情を感じましたね。
だからこそ、きちんと大事に手入れされ、維持されているのですよね。
これが築200年超えの古民家だ!
では、ここから與那原氏が実際に住んでいる築200年の古民家をご紹介していきます。
こちら!
田んぼの中にどーーーん!
最初にすこし、こちらの古民家のついて説明しておきますね。
この與那原氏が住んでいる古民家は、「主屋(おもや)」と「蔵」が、江戸後期の文化・文政時代(1804~1830年)の建築と言われています。
奥さまの実家「太宰家」の6代目の時に、庄屋の株を買って、この地域の庄屋となったそうです。
(與那原氏は沖縄ご出身。2000年に東京から宇和島市に移住されました。)
こちらが古民家の見取り図。
この「太宰家」の建築的特徴として、表裏並行に三室づつ並ぶ藩政時代の典型的な豪農(ごうのう)の間取りを持っているそうです。
(「豪農」の意味は、多くの土地・財産を持ち、その地方で勢力のある農家のこと)
(引用:犬伏武彦著 【民家ロマンチック街道―伊予路】)
「太宰家」の歴史などに関しては、下記與那原氏のブログにて詳細が書かれているのでどうぞ!
→ 【古民家】太宰家や長屋門をリフォームした設計事務所の紹介!
ではさっそく古民家散策!
こちらが與那原家の古民家入り口部分の建物。
「長屋門(ながやもん)」という作りで、両側が長屋になっている門です。
門なのに、その中に人が住んだりできるようになっています。
この「長屋門」の右側の部分が、「與那原浩建築設計室」のオフィスになっています。
この部分は昔「男衆部屋(おとこしべや)」といって、男性の使用人の部屋だったそうです。
「長屋門」の中にある「與那原浩建築設計室」のオフィスはこんな感じ。
仕事も「古民家」でやっているんですねー
古民家のよさ、木のぬくもりや温かさを残しながらリフォームされているのはさすが!
まったく古臭く感じず、快適なログハウスのようです。
ちなみに、この入り口から見える景色はこちら。
山に囲まれている!
東京生まれ東京育ちのわたしにとっては、「ザ・田舎!」「これぞ古民家!」という憧れのロケーション!
正面建物が「主屋(おもや)」です。
古民家らしく、屋根が巨大です。
(本来は「かやぶき屋根」なのですが、現在は傷み防止のために周りを覆っています)
こちらが「主屋」から見た「長屋門」の裏側です。
中庭ですね。
「主屋」から「長屋門」へ続く道の雰囲気がいいですね。
こちらは別の角度から。
こちらは屋根の内側部分です。
「小屋組(こやぐみ)」と呼ばれる屋根の骨組みの構造が見えています。
日本の伝統的な工法を使った独特な作りは美しく、そしてダイナミック。
この「小屋組」がいちばん印象に残っています。
巨大な屋根を支えるために、これだけたくさんの柱を使っているのですね。
複雑に入り組んでいて、当時の技術の高さがうかがえます。
そして、芸術的な美しさ!
こちらは「土間」。
いいかんじに苔が生えています^^
家の中に苔が生えているのにいいかんじってすごいですよね。
わびさびがここにあるって感じですねー
土間の床は、「三和土(たたき)」という床仕上げ。
こちらは「土間」にある「かまど」。
まるでどこかの民族博物館みたいです。
さすがに今は使ってはいないようです。
こちらは、「土間」の横にある「前の間」。
床板のいかにも年季が入った黒光り感がすばらしい。
そして、活けられてる花は、裏山からとってきたもので。
実に生命力があります。
こういうちょっとしたことが、古民家に住む醍醐味、良さですね。
與那原氏のブログで、「小屋組」と「土間」の動画がアップされていたので、ぜひその素晴らしさを見てみてくださいね。
今度は、「主屋」の中にある部屋。
由緒正しいと思われる屏風やら掛け軸やらが多数!
なんかすごいということだけはわかりました(^_^;
家に戦の屏風があるなんてびっくりですよね。
これは壁一面もの巨大サイズの屏風!
立派です。
掛け軸もいいですが、壁の色もいいですね。
床の間の横にある「床脇(とこわき)」。
「これぞ日本間!」という雰囲気をかもし出しています。
「天袋(てんぶくろ)」(上のちいさな障子の場所)に書かれた絵が素晴らしいですね。
別の部屋の「床脇」。
とっても偉いかたと思われる白黒写真や剥製が、重厚感と金持ち感をアップ!
こちらはお庭。
きちんと手入れされた力強い木たちがあふれています。
こちらの写真の右端に見えているのが部分が「離れ」。
渡り廊下で「主屋」とがつながっています。
こちらがその、「主屋」と「離れ」を結ぶ「渡り廊下」。
こちらが「離れ」です。
今回わたしは、こちらの「離れ」の一室で泊まらせていただきました。
こちらは時代劇に出てくるような「縁側(えんがわ)」。
こちらは「巴蓋(ともえぶた)」という装飾瓦。
魔除け的な意味があります。
縁起がいい「鯉」と「桃」がモチーフです。
こちらは「桃」。
宇和島城の瓦にも「桃」がありました。
こちらは「鬼瓦」。
愛嬌ある鬼さんですね。
こちらは、建物の土台部分。
伝統工法の「石場立て(いしばだて)」という構造だそうです。
コンクリートがない時代の足固めですね。
伝統工法をふんだんに使った古民家。
自然と共存するための先人たちの知恵がつまっています。
そして、地方の文化がちりばめられています。
すごいぞ「古民家」!
なかなか私では伝えきれませんので、あとは與那原氏のブログで!
與那原氏のブログでは、このような古民家や日本建築の魅力やうんちく、リアルな古民家事情などを、写真や動画でたっぷりと紹介していますよ^^
→ よなはら家の古民家日記~古民家建築の専門家 與那原浩のブログ~
與那原家の『古民家』リノベーションがすごい!
最近は『古民家』ブームということもあり、地方の『古民家』に住もうという人たちも増えてきているそうです。
そういったかたには、ぜひ與那原ご夫婦の生活やリノベーション・リフォームを参考にしてほしいと思います。
與那原氏も、リノベーションにはいろいろと試行錯誤してきたようです。
そのビフォーアフターを見てみるとわかりやすいです。
キッチン
こちらはキッチンのリノベーションのビフォーアフター。
こちらが2005年の改装前。
こちらが改装した直後のキッチン。
劇的な変化ですね!
壁や天井をスギ、床はヒノキへ。
キッチンはシステムキッチンへ。
段差もなくし、使い勝手が増しています。
こちらは、11年たった現在のキッチン。
床や壁の木材が、味わい深い色に変化していますね。
リビング
こちらはリビングのリノベーションのビフォーアフター。
こちらがビフォー。
こちらが改装後。
リビングも劇的な変化ですね!
キッチン同様、スギ、ヒノキがふんだんに使用されています。
壁は調湿機能がある珪藻土の塗壁。
窓はアルミサッシではなく、木のぬくもりを活かしたタイプのもの。
じつに開放感あふれる窓になっています。
與那原氏のリノベーションの特徴は、「木」をうまくとりこんでいること。
そのぬくもりや特徴を、最大限に活かしています。
そして、「引き戸」などを使って、スペースを効率的に生かす工法。
與那原家も引き戸を使って、実にうまく空間を作りだしています。
そして、北欧テイストが感じられるセンス。
下記は寝室ですが、和モダンテイストにどこかスウェーデンなどの北欧的なテイストを感じます。
スウェーデンの家具メーカー「IKEA(イケア)」の商品をみてもわかりますが、北欧のデザインは、木をふんだんに使い、しかもセンスがいいですよね。
與那原氏のデザインセンスは、和モダンと北欧テイストが絶妙なバランスで組み合わさっています。
與那原家のキッチンとリビングの動画はこちら。
與那原家のリノベーションについては、下記與那原氏のブログ記事で詳しく書かれています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
→ 【古民家リノベーション】古民家に住みたい人必見!意外と知らない古民家建築の種類と特徴とは?②
『古民家』に住むということとは?
『古民家』に住むこと。
今回、與那原氏の古民家にお世話になり、すこし考えてみました。
『古民家』に住むということは、けっこう大変なことだと思っています。
建物が古いので、寒い、暗い、怖い、虫が多い、メンテがしょっちゅう必要・・・
まあ不便ってことですよね、われわれ都会に住んでいる現代人にとっては。
でも一方で、とても豊かな面があるのですよね。
たとえばこちら。
ごちそうになった奥さまの手料理ですが、裏山でとれたタケノコと山菜(ワラビ)を使っています。
裏山にいけば、タケノコがいっぱい生えているそうです^^
こちらは「ワラビの梅干し」煮。
ワラビも取り放題のようです。
宇和島市は海に面しているので、海の幸も豊富!
東京では考えられない新鮮な魚たちが手に入ります。
下記の魚たちは、與那原氏奥さまのお兄様が釣ってきたもの。
釣り好きにはたまらない環境ですね。
これはイサキ。
これはグレ(メジナ)。
新鮮な魚は刺身で!
そして、煮物に!
これはハゲ(カワハギ)と野菜の炊き合わせ。
おまけで、これは宇和島市名物「じゃこてん」と「錦巻」。
宇和島市はリアス式海岸で良質な漁場があります。
だから、新鮮で良質な魚がたくさんとれるので、おいしいじゃこてんやカマボコが作られるのです^^
すばらしい自然の中で、のびのびと育った元気いっぱいな食材。
それを、ローカルなレシピで作って食べる!
最高ですよね^^
(與那原氏奥さまの宇和島市ローカル料理レシピはこちらのブログで見れますよ! → おふくろ料理好きの夫をうならせる!うちごはんレシピ【詳細画像つき】)
便利で快適な現代の生活と、ちょっと不便な昔ながらの生活。
どちらも一長一短ありますね。
この「ふり幅」をちょうどいいバランスで保てるのが、「古民家+リノベーション」なのかなと思いました。
豊かな自然に囲まれた環境。
ローカルな美味しい食材。
東京ほどかからない生活費。
こういった地方の古民家のよさに、快適さをプラスするリノベーション。
まさに、いいとこどり^^
「地方の古民家に住む」というライフスタイルは、今後さらに注目されていくでしょうね。
今回お世話になった與那原ご夫婦
最後に、今回お世話になった與那原夫妻をご紹介しておきますね。
こちらが、與那原浩氏。
「與那原浩建築設計室」代表であり、『木組みの家 宇和島市』研究会会長、『五寸角の家』普及推進協議会会長、『内子町文化財保護審議会』委員。
「古民家に学ぶ家づくり」「地域材の活用と伝統構法の継承」をテーマとした住宅設計をされています。
笑顔がすごい素敵です^^
(公式ホームページに書かれている與那原浩氏のプロフィールはこちら → 「與那原浩建築設計室」プロフィールページ)
こちらが、奥様の與那原慶子氏。
この太宰家の末裔のかたです。
ですから、生まれたときから古民家に住んでいるという生粋の古民家っ子(?)。
まあ、おふたりとも、ほんとうに「古民家大好き!」って人なんです^^
だから、古民家の再生やリノベーションにも、愛情たっぷりに取り組まれています。
お客さまからの信頼が厚く、宇和島市地域での古民家専門家として第一人者というのもうなづけます。
ご夫婦で更新されているブログが、とにかく充実しています。
自宅と住まわれている古民家のことはもちろん、建築方法、リフォームの補助金のことなど、古民家に住んでみたいと思っている人には必須の情報が満載。
しかも、わかりやすく書かれています。
ぜひ一読されることをおすすめします。
よなはら家の古民家日記~古民家建築の専門家 與那原浩のブログ~
http://h0209yonahara.blog.jp/
「與那原浩建築設計室」詳細
こちらが「與那原浩建築設計室」さんの詳細です。
四国愛媛、南予地方、宇和島市で、古民家の再生、リノベーションやリフォームなどを検討されているかた、まずはお気軽に問合せしてみてくださいね。
下記公式HPにあるお問合せフォームからどうぞ!
名称 | 與那原浩建築設計室 |
住所 | 〒798-1136 愛媛県宇和島市三間町大内20番地 太宰家長屋門内 |
TEL/FAX | 0895-20-7250 |
公式HP | http://yonahara-sekkei.info/ |