岡山県の「犬島」にある『犬島精錬所美術館』へ行ってきました。
すでに役目を終えた銅製錬所を保存・再生した美術館は、あの「軍艦島」を思わせます。
そして、この現代アートにオブラートされた美術館の背景には、目をそむけてはいけない「負の遺産」があることも忘れてはいけません。
今回の記事は、『犬島精錬所美術館』について書いてみますね!
目次
『犬島精錬所美術館』って何?
では最初に、『犬島精錬所美術館』について簡単に説明しますね。
まずは、美術館ではない「犬島精錬所」について。
犬島精錬所(いぬじませいれんしょ)は、岡山県邑久郡朝日村犬島(当時、現在の岡山市東区)にかつて存在した銅の精錬所。最盛期は2000人を超える従業員がいた。しかし、銅価格の暴落などにより1919年(大正8年)には操業を停止、1925年(大正14年)に廃止になった。
(ウィキペディアより)
公式ホームページでの美術館の説明がこちら。
犬島精錬所美術館は、犬島に残る銅製錬所の遺構を保存・再生した美術館です。「在るものを活かし、無いものを創る」というコンセプトのもと作られた美術館は既存の煙突やカラミ煉瓦、太陽や地熱などの自然エネルギーを利用した環境に負荷を与えない三分一博志の建築と、日本の近代化に警鐘をならした三島由紀夫をモチーフにした柳幸典の作品、また植物の力を利用した高度な水質浄化システムを導入しています。「遺産、建築、アート、環境」による循環型社会を意識したプロジェクトといえます。
(公式ホームページより)
すこし補足します。
犬島は、古くから御影石の産地として知られていました。
「犬島精錬所」は1909年(明治42年)、帯江鉱山の精錬所として開設。
1913年(大正2年)、藤田組(現在のDOWAホールディングス)が、帯江鉱山の経営者でもあった坂本金弥から買収。
藤田組買収後は規模が拡大され、精錬所最盛期には、月300トンの銅の精錬を行い、島の人口は5000から6000人程度いたといわれる。
1916年(大正5年)に、銅価格はピークを迎える。
そして、第一次世界大戦が終息に向かうにつれて暴落した銅価格は、1919年(大正8年)には、ピーク時の半値にまで落ちる。
この価格暴落と鉱石争奪戦によって1919年中に操業を停止。
再建のめどが立たず、1925年(大正14年)廃止。
廃止された後は、テレビドラマの「西部警察」や映画「カンゾー先生」、「鉄人28号」のロケ地として利用される。
2001年(平成13年)、ベネッセコーポレーション会長(当時)の福武總一郎により買収される。
直島福武美術館財団により、精錬所跡を利用した犬島アートプロジェクトの一部として再利用される。
銅の精錬所としてわずか10年で休業、それから約90年放置。
という流れとなります。
『犬島精錬所美術館』の場所と行き方について
では、『犬島精錬所美術館』の場所について。
場所は、岡山県の「犬島(いぬじま)」という離島にあります。
「犬島」へは、岡山県の宝伝港、もしくは香川県高松から行くのがいいでしょう。
高松から「犬島」への行き方などについては、下記の記事にまとめていますので参考にしてみてくださいね。
『犬島精錬所美術館』はこんな場所でした!
犬島の港に到着すると、こんなこじゃれた建物が出迎えてくれます。
ここが、犬島観光の起点ですね。
観光案内やカフェ、お土産屋も入っています。
トイレやコインロッカーも完備しています。
動画もありますので、犬島港からの雰囲気を確認してみてくださいね。
港から「犬島精錬所美術館」へは、こんな海沿いの景色を横目に歩いていきます。
徒歩5分程度です。
見晴らしがいいので、定期船のりばから「犬島精錬所美術館」が見えます。
定期船のりばから「犬島精錬所美術館」までは、気持ちのいいビーチをのんびり歩いていきます。
動画でどうぞー。
あっという間に「犬島精錬所美術館」に到着。
「犬島精錬所」のランドマークともいえる赤っぽい煙突が見えます。
門をくぐると、ところどころ崩れ落ちた退廃的なレンガの壁がところどころにある景色が広がっています。
この黒いレンガは、「カラミ煉瓦」と呼ばれるもの。
銅を精錬時に出る「スラグ」とよばれる廃棄物(クズ)で作られているようです。
この独特なにぶく黒光りする「カラミ煉瓦」が、退廃的な雰囲気をより醸し出しています。
「西部警察」の最終回のロケ地として使われたそうですが、このシーンの場所でしょうか。
(大門団長・・・)
むちゃくちゃ大爆発していますけど。
(さすが石原プロ)
こちらが、美術館の本館。
「犬島精錬所美術館」の内部は、残念ながら撮影禁止です。
ですので、画像はありません。
内部の作りは、「太陽や地熱などの自然エネルギーを利用した環境に負荷を与えない」というコンセプトを感じられるようになっています。
電気を使わなくても、自然の力だけで部屋の温度や空気の流れを最適にすることができるということを実感できます。
三島由紀夫にちなんだアートも楽しめます。
三島由紀夫が生前に住んでいた渋谷区松涛の家の一部を利用した、ちょっと不思議なアートです。
三島由紀夫ファンならたまらないでしょうね。
でも、三島由紀夫と犬島のつながりがイマイチわからず。
いちおう、「日本の近代化に警鐘を鳴らした小説家・三島由紀夫というモチーフを重ね、建築と協働による6つのスペースを作品として展開し、今後の日本のあり方や現代社会について問いかけています」という説明はありますけど。
『犬島精錬所美術館』を見る前に知っておきたいこと
『犬島精錬所美術館』を見る前に知っておきたいことを書いておきます。
それは「負の遺産」と「環境問題」です。
この点について、個人的な意見は書きません。
ですが、事実として知っておくことは、この犬島を訪問する上でとても大事なことだと思いましたので、あえて書かせていただきます。
知っておきたい過去の問題点は2つ。
まずひとつめ。
この犬島は、銅精錬事業によって起きた公害によってボロボロになったということ。
そしてふたつめ。
産業廃棄物不法投棄問題です。
(この2つは別々の問題です)
銅の精錬は、「足尾銅山」が物語っているように大変な公害を起こすことを背中合わせです。
精錬過程に出る鉱毒ガス、汚染水・・・
犬島もそのダメージを負いました。
そして、産業廃棄物不法投棄は、当時大きな問題となりました。
犬島のとなりにある「豊島(てしま)」で、大量の産業廃棄物が不法投棄されたのです。
投棄、放置された産業廃棄物は、50万トンにもおよぶともいわれます。
周辺では、鉛などの有害廃棄物も基準を超え、ダイオキシンも高濃度に含まれていることもわかった。
このダメージを負った島(犬島、豊島、直島)を建て直し、活性化させる。
それを島民とともに動いたのが、ベネッセの福武總一郎氏であり、その活動が「瀬戸内国際芸術祭」なのである。
瀬戸内の美しい島々。
それが、高度成長、都市部への集中といったことによって押し付けられた「負の遺産」を抱えてもがいている。
この「負の遺産」を抱えている島々を活性化させるための起爆剤が、「瀬戸内国際芸術祭」の現代アートなのだということ。
最後に、福武 總一郎のメッセージを引用させていただきます。
瀬戸内海は日本の原風景の自然が残り日本で最初に国立公園に指定された世界に誇れる最も美しい場所のひとつです。私は「在るものを活かし、無いものを創る」という理念のもと、瀬戸内の自然を生かしながら、お年寄りの笑顔の溢れる場所こそ、この世の楽園であるとの信念を持って建築と現代美術を活用してその再生に取り組んでいます。
『犬島精錬所美術館』おまとめ
『犬島精錬所美術館』は、やはり背景を知ったうえで行きたい場所ですね。
たった100年でここまで変わるんだと実感しますし、人間のエゴというものも実感できます。
忘れてはいけないことがここにあるし、ここに来ることでしか感じられないことがあります。
タイミングがあえば、ぜひ足を運んでみてくださいね。
『犬島精錬所美術館』詳細
名称 | 犬島精錬所美術館 |
住所 | 岡山県岡山市東区犬島327~4 |
電話番号 | 086-947-1112 |
営業時間 | 10:00 ~ 16:30(最終入館16:00) チケットセンター 10:00 ~ 17:00 |
定休日 | 火曜日(3月1日~11月30日) 火曜日から木曜日(12月1日~2月末日) ※ただし祝日の場合は開館、翌日休館 ※ただし月曜日が祝日の場合は、火曜日開館、翌水曜日休館 |
入場料金 | 2,060円 |
公式ホームページ | http://benesse-artsite.jp/art/seirensho.html |
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